[ストーリー] ドロシーが偽者であり、本人は誘拐されていることを知った警備隊員はスパイを探すことに。ダンを見つけた偽のドロシーは、それがセブンの正体であることを驚く。ダンは地球の武器研究の中止と引き換えにペダン星人の退却を要求・約束させる。ダンの決死の進言で防衛センターを納得させたものの、ペダン星人は本気で地球侵略を考えるようになる。あの強力ロボットを前に防衛軍のとった作戦は・・・。
初の続き物ということで、前回、「セブン絶体絶命!」という終わり方をしただけに続きが大いに気になったものですが、何ということはありません。セブンの後ろからの必死のタックルで倒されたキングジョーは、そのまま元の宇宙船に分解を始めます。ヒーローであるウルトラセブンは毎回姿を見せなくてはならない、という大義名分と、ぜひ続きを見てもらいたいという演出上の都合から、無理に登場願ったという印象は免れません。
ここで一息つく間もなく、警備隊員は次の対策を練る。会議が中止になったのでもうペダン星人は地球に用はないのでは、とアマギが言うと、徐にダンが現れ、心配するアンヌをよそに敵の真意を語る。隊長もまともにそれを受け入れ、スパイに備えるよう皆に張り込みの指示を出す。宇宙人心理にやけに詳しいダンと、すぐにそれを信用する隊長。このあたりの伏線については何かと物議の対象になります。「隊長はダンの正体を知っているのでは」という・・・。
張り込みをする隊員たちのいでたちに注目です。ラフな登山スタイルのアマギ、妙に気取った船員服姿のソガ、まるでハリウッド女優を気取るようなアンヌ・・・。最も「普通の」格好のダンが双眼鏡から見下ろす先にドロシーを発見します。
急いでダンは追いかけるものの、あの人の数、双眼鏡からの距離からして、いくら正体がセブンだからって歩いているドロシーに追いつくのは無理だと思うのですが・・・追いつくのです(笑)。そして宇宙人であるダンとドロシーに扮したペダン星人の印象的な「対談」が始まります。実はこのペダン星人もセブンの正体をこのとき初めて知ったようです。この会話の内容には深い意味が含まれているようで、考えさせられます。対人間、民族間、国際関係とあらゆる世界に存在する「ルール」についての問題をつきつけられます。この「ウルトラセブン」の世界では当然に宇宙間の問題になるわけですが、少年時に見ると実にリアリティーをもって見せられたのですね。宇宙に生物がいるという前提で見ているわけですから・・・。
ダンはこのとき、防衛長官にも隊長にも相談することなく、ペダン星人と「武器の研究を中止する」などと勝手に大変な約束をしてしまいます。そのかわりにペダン星人の退却という「約束」をとりつけたわけですが、それにしても何という無謀な・・・。事後報告をするものの、案の定隊長は「えっ!研究を中止しろだって」と不快そう。隊員たちもアンヌ以外は拒否反応。ダンもつい口がすべって「宇宙人同士、いや地球人とペダン星人の約束」などと言ってしまいます。
一方で、「約束」を勝ち取ったペダン星人は「よくやった」と高笑い・・・。「こんな美しい星は初めて見た、必ず手に入れてみせるぞ」と急に気が変わった、という態度。たった今、他の星のルール違反を非難したばかりで、何だか「宇宙人=悪者」という偏見をテレビの前の良い子たちに教えているみたい(笑)。ここはキングジョーの腰の部分の司令室のようですが、このステンドグラスでも見るような、わずかなカットがペダン星人の影を表すものとして、ペダン星人の紹介の折にこの場面が取り上げられます。
ダンはツチダ博士に研究の中止を直訴し、認めてもらうものの、釈放された本物のドロシーは記憶を消されていることが判明。さらにペダン星人の宇宙船団が地球に向かってくるとの情報が・・・。そしてキングジョーは再び神戸港に出現し攻撃を開始する。まんまと裏切られたダン。独断専行の責任はどうする・・・。
前作「ウルトラマン」ではイデ隊員またはイワモト博士が作る超兵器でしばしば怪獣を倒したものの、「ウルトラセブン」ではここまでのところ、そういった場面はありません。その必要もないほどの敵もありましたが・・・。この回はセブンが初めて苦戦したこともあり、このツチダ博士が何やら製造しています。そしてショック療法によって意識を回復したドロシーの協力もあってようやく完成にこぎつけます。その名も「ライトンR30」。
何はともあれ、セブン初の前後編にわたる長編は終わりました。スパイの暗躍を題材にし、強力なロボットを登場させてセブンを苦しめ、宇宙のルールなどの論議まで持ち出しましたが、終わってみれば今ひとつ物足りないと感じるのは私だけでしょうか。外国人のスパイが登場し、場所も国際都市・神戸の港、作品世界の色合いが初めから普段とは明らかに違うために違和感を覚えたこともありましょうが、子供が内容を理解するには少々難解だし、とにかくいつものセブンとは違うのです。幼少時に見たときはキングジョーが強いという印象だけしかなく、作品世界にはどうしてもなじめませんでした。大人になってようやく理解はできても、「子供でも楽しめる」気軽さを求めてしまう世代には少々苦手な内容ではあります。
侵略者
ペダン星人(策略星人)
侵略目的
地球の観測ロケットを侵略と誤解 途中から本気で侵略を狙う
侵略方法
防衛会議の妨害 うその約束をさせて地球を攻撃
侵略アイテム
ドロシーを誘拐したスパイ キングジョー 宇宙船
防衛軍の対策
謝罪の電報 いったんは研究を中止