[ストーリー] 防衛軍基地内の秘密工場でセガワ、マエノ両博士による新型破壊兵器「R1号」が完成。水爆8000個の威力を持つその兵器は軽く惑星も吹き飛ばしてしまうという。いよいよ実験開始というときにダンが悲痛な表情で、実験の中止を訴えるが、強行され無事に成功。しかし生物がいないはずのその星からは多量の放射能を浴びた生物が地球に飛来してくる。よもやの事態に博士をはじめ防衛軍は大わらわ。
「ウルトラセブン」作品中でも屈指の傑作といってよいかもしれません。東西冷戦の真っ最中にこの脚本を作成し、作品に仕上げることは独裁国家でなくてもかなり勇気のいることだと思います。仕上がりも素晴らしくまずはお見事といえるでしょう。この話の主役はタイトル通り「超兵器R1号」といってよいでしょう。何しろとてつもない破壊力。そしてその完成を喜ぶ博士や隊員たちの発言もかなり過激で挑発的です。「地球を侵略しようとする惑星なんか、ボタンひとつで木っ端微塵だ」「ボタンの上に指をかけて侵略する奴を待っていればいいんだ」「実験が成功すればギエロン星は宇宙から姿を消すでしょう」・・・聞くだけで背筋が寒くなるようなセリフを皆、次々と興奮気味に語るのですから。しかし、そんな恐ろしいものを地球においておきながらよく「地球の防衛は完璧だ」といえたものです。うっかり引火でもしようものなら何と哀れな結末に・・・(苦笑)。
そんな中、ダンだけが浮かない顔・・・さすがは恒点観測員、さすらいの宇宙人。フルハシに「地球を守るためなら何をしてもいいのですか?」と詰め寄る。フルハシも、俺に言われても・・・というような複雑な表情。そして、強力な破壊兵器の競い合いになるという禅問答の末、ダンがポツリと「それは・・・血を吐きながら続ける、悲しいマラソンですよ・・・」出ました!とっておきの名セリフ。東西冷戦に対してのアンチテーゼともとれる、これ以上ない一語ですね。当時の米ソ首脳がこの作品を見たら一体どんな反応を示すでしょうか。
超兵器開発に携わったマエノ博士は女性博士で、まだ若いです。どこかで見た記憶が・・・と思いきや、「ウルトラQ」で、南極で婚約者を失って越冬隊員に志願し、果敢にペギラに立ち向かったあの方です。今回実験場所として生物がいない(はずの)ギエロン星を選んだのもこの人。先述の過激発言も実に生き生きとした優しい目で語るところが何ともコワイ・・・。
実験は成功、子供のように喜ぶ防衛軍基地内。しかし、すぐさま何者かの姿をキャッチ、観測艇が攻撃を受けるという事態に!やってきたのは怪獣、素のままで宇宙を飛んでいます。これがギエロン星獣ですが、どうみても知能がありそうには見えません。しかし、突然わけもわからず故郷を破壊され、すぐにどこから来たともわからない兵器が飛んできた方向へ向けて飛び立っているのです。放射能のおかげで凶暴化しているとしても、実はもともとかなりの知能・文明を持った宇宙人と考えた方が妥当なのではないでしょうか。
ところでこのギエロン星獣、かなり手ごわいです。セブンの必殺技アイスラッガーもはね返すし、放射能はもちろんのこと、強力な怪光線まで放ってセブンを大いに苦しめます。しかし思うのですが、ゴジラに始まってからというもの、放射能を浴びた怪獣が放射能を吐くというのはいかがなものでしょう?光化学スモッグを浴びたからといって光化学スモッグを吐く生物など聞いたことがありませんし、理論的にも理解に苦しみます。発想としては悪くはありませんが・・・。
ギエロン星獣の存在も物悲しいものがあります。何の罪もない宇宙の一生物が突然に住処を失われて、行き着いた先で強靭な生命力を発揮して行いたくもない争いを起こす。無言で痛切に鳴き声を出すところに、その鳥に似た風貌が一層悲壮感を掻き立てます。これも宇宙の掟なのでしょうか・・・。
結局最後にはR1号や、さらに強力なR2号の開発は断念する方向で話は進んでいきます。滅ぼされたギエロン星からは何のメッセージも得られませんでしたが、その中に内包する悲痛な叫びをいち早くくみとってあげるべきだという、遅まきながらの思いやりを見せてこの話は終わります。かごの中のくるくると回転するおもちゃに身をゆだねるリスの姿が印象的なラストシーンです。このリスが血を吐きながらマラソンしている人間の姿を暗示させるのでしょうか。あまりにも強烈なインパクトでメッセージを受け取ったお話でした。
侵略者
ギエロン星獣(再生怪獣)
侵略目的
超兵器の実験に住処を滅ぼされた復讐のため?
侵略方法
単身飛来し放射能を浴びせる
侵略アイテム
怪光線 放射能
防衛軍の対策
よもやの事態に結構うろたえています